天台五門跡の一つで別名、梶井御殿とも呼ばれる三千院。最澄が比叡山に小堂を建て、応仁の乱後大原に移転した。自然の傾斜を生かした境内には客殿、宸殿が立ち、池泉回遊式の聚碧園と有清園の2つの庭が造られている。有清園の杉木立と楓、地面を覆う苔に浮かびあがるように本堂、住生極楽院が立つ。仏様を狭い堂内に納めるため天井を舟底形にした舟底型天井が有名。本尊阿弥陀如来と正座した姿が珍しい脇侍のニ菩薩が安置されている。尚、希望すれば写経を行うことも出来る。
大原のバス停から三千院と反対の、草生の里をぬけると寂光院に着く。楓におおわれた石段を上り、門をくぐると尼寺らしい清楚な庭に本堂、書院がひっそりと立つ。『平家物語』に因んだ汀の池や本堂横の庭はどこから見ても正面になる不思議な造りで有名。建礼門院がわが子安徳帝と平家一門の冥福を祈って隠れ住んだところで、本堂には地蔵菩薩像と建礼門院像、大原女のモデルと言われる阿波内侍像が安置される。
ライトアップで人気のお寺。勝林院の塔頭で声明の道場として開かれた。遠景に山、中央に竹林、近くに低木、これを障子を取り払った広縁を額縁に見立てて眺める庭はすばらしく、紅葉時の夕映えはことのほか美しい。廊下の天井は有名な「桃山の血天井」。鳥居元忠以下数百名が自刃した伏見城の廊下を天井にして供養したもの。拝観料には抹茶と菓子がセットになっているので、ゆっくりお茶をいただきながら大原の里にひたりたい。春と秋にはライトアップイベントも開催される。
三千院の北にある。延暦寺を中興した慈覚大師円仁を開基とし、円仁が中国から伝えた経文に節を付けて歌う仏教儀礼音楽の声明を修行するために建てられた。客殿には声明研究のための楽器や詩仙堂の模写である中国三十六歌仙が掲げられている。客殿西にある池泉回遊式庭園の旧理覚庭園には、10月に咲き始め、紅葉時に満開になり、春まで咲き続けるという珍しい不断桜が植えられている。秋には紅葉と桜が同時に楽しめるのでぜひねらって訪れたいまた、趣の違う池泉鑑賞式の契心園も興味深い。
三千院を出て呂川沿いを上っていくと古い山門の来迎院がある。大原声明の発祥の地となった古刹。声明(仏教歌謡)は独特の節を付けて唱えるお経で、浄瑠璃、謡曲、民謡など日本の音楽の源流だといわれている。毎週日曜13時から本物の声明を聴くことができる。落ち着いた佇まいの本堂には薬師、阿弥陀、釈迦三如来像が安置され藤原期の木像漆箔寄木造りで三尊揃うことは珍しい。
慶長14年(1609)、木食上人弾誓が開いた妙法念仏の道場。本尊は上人自作の植髪の自像。上人の即身成仏のミイラを納める岩窟もある。本道の阿弥陀如来座像は国重文。